ナンシー・ヴィエイラ・アンド・フレッヂ・マルチンス

「エスペランサ〜希望〜」

Nancy Vieira and Fred Martins “Esperança”

「エスペランサ〜希望〜」
ブラジル音楽とカーボ・ヴェルデの音楽が見事に融合した、宝石のような1枚!

■アルバム内容

日本語タイトルを冠した、カーボ・ヴェルデ生まれの楽曲「Saiko Dayo 」(最高だよ!)も収録!

元々、文化的、人的に強い繋がりがあったブラジルとカーボ・ヴェルデ。
両国とも、かってポルトガルの植民地であり、公用語もポルトガル語です。

「カーボ・ヴェルデ音楽のサウンドは、ブラジル人の耳には、とても親しみ易く響きます。また、カーボ・ヴェルデ人には心の音楽とも言える『モルナ』に宿る『ソダーデ』の感覚は、ボサノヴァに宿る『サウダージ』の感覚とほぼ同じで、私たちのアルバムからも、その感覚を十分に感じて頂けると思います」(フレッヂ)

カーボ・ヴェルデの歌姫ナンシー・ヴィエイラと、ブラジル、リオデジャネイロ出身のシンガー・ソングライター、フレッヂ・マルチンスは2013年に出会いました。

「僕の友人のピアニストがナンシーの事をよく話してくれました。そして『君はナンシーに会うべきだ』と言うのです。私はナンシーの音源を聴き、ビデオを観ました。そして、ポルトガルで録音をした私のアルバムに、ナンシーを呼ぶ事になったのです。その録音で、彼女はサンバを完璧に歌いこなしました。私はとても感動し、そこから私たちの長きに渡るパートナーシップと友情がスタートしたのです」(フレッヂ)

以来、二人は数々のコンサートやレコーディングを共にし、そして今回、初のアルバムリリースとなりました。

3曲目にチャランゴが入っていますが、それ以外は全て、ナンシーのボーカルと、フレッヂのボーカルとギターのみでアルバムは構成されています。

「ギターはブラジルのポピュラー音楽にとって、大変重要な楽器です。ブラジルの偉大な音楽家は、ギターで彼らの音楽を創造し、アレンジをして来ました。カーボ・ヴェルデの音楽、特にモルナでもギターはとても大切な楽器です。そのような視点に立ち、今回はギターのみの録音としました」(フレッヂ)

収録曲は、4曲のフレッヂのオリジナル曲に、キューバの作曲家フランク・ドミンゲス作のボレロ、カーボ・ヴェルデの作曲家による作品、ポルトガルの歌手アメリア・ムジェの作品を収録しています。
収録曲の選曲に関して、ナンシーとフレッヂが意識したことは、今の時代を見据えて、同じ地球に生きる人間として、お互いを思いやり、共感し合う大切さを喚起させてくれるような曲を選ぶことでした。
例えば、アルバム6曲目「A Paz Que Nasce(もたらされる平和)」の歌詞は、
O pão que se divide vira canção(分かち合って生まれてくる歌)
A mão que se decide vence o canhão(手を差し伸べれば、乗り越えられる争い)
Pegando na mão(手を取り合って)
De uma multidão(群衆の手を)
De gente que ama(愛する人々の手を)

「私たちが生きている世界と時代が今、どのような局面にあるのかを考えた時、世界中の人々がお互いを思いやり、愛を基調に共感し合えればと願い、その願いをもとに、アルバム収録曲を決めました」(ナンシー&フレッヂ)

「モルナ」と呼ばれる、ポルトガルのファドに匹敵する、哀愁を帯びたカーボ・ヴェルデの歌唱と、ボサノヴァを基調にしたギターによる演奏。 カーボ・ヴェルデとブラジル、2つの国の音楽が持つ、この上もない美しさが見事に融合した作品であり、また、今の時代に伝えたい思いが詰まった作品です。


■収録曲

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①Não Sou Daqui ここの者ではなくても
(作詞・作曲:Amélia Muge)
みんなそれぞれ掛け替えのない居場所があると歌ったこの曲は、ポルトガルの歌手、作曲家、作詞家として知られるアメリア・ムジェの作品です。
②Colibri コリブリ(ハミングバード)
(作詞・作曲:Marcelo Diniz/Fred Martins)
フレッヂは、「私の国で、困難の中、生き延びている人々に思いを馳せながら作りました。人生が困難な時ほど、陽気さと喜びを忘れずに困難を克服し、生き延びたい。幸福を運ぶ鳥と呼ばれるコリブリ=ハミングバードに思いを馳せながら作りました」と述べています。
③Saiko Dayo 最高だよ!
(作詞・作曲:Gregório Gonçalves)
カーボ・ヴェルデで生まれた日本語タイトルのこの曲は、1960年代から1970年代、日本のマグロ漁船の寄港地だったカーボ・ヴェルデにて、日本人の船員との交流の中から生まれた曲です。「カーニバルのマーチの形式をモチーフにアレンジしました。このアレンジはカーボ・ヴェルデの音楽『コラデイラ』のリズムにも近いものです」(フレッヂ)
なお、「Saiko Dayo」というカーニバルのグループも存在します。このグループのメンバーは言います。「最高のパーティーを開けるのは、僕らだよ!」
④Proeza 愛すること
(作詞・作曲: Marcelo Diniz/Fred Martins)
フレッヂは、「私たちはこれからの世界と世代になにを残し、なにを伝えて行けるだろうかと考えました。この曲では、父親が生まれてきた子どもに対して、伝えて行きたい事が歌い込まれています」と述べています。愛することで、すべて価値あるものになるでしょう、と歌われています。
⑤Querida 愛しい人
(作詞・作曲:Manuel d'Novas)
カーボ・ヴェルデで歌われて来たスタンダード曲です。「豊かな詩的センスと繊細なメロディー。私はボサノヴァを念頭にこの曲をアレンジし、演奏しました」(フレッヂ)
⑥A Paz Que Nasce もたらされる平和
(作詞・作曲: Alexandre Lemos/Fred Martins)
サンバはブラジル人にとってアイデンティティともなる音楽であり、カーボ・ヴェルデの音楽の一部にもなっています。ブラジルで400年も続いた奴隷制度にルーツを持つサンバ。「一部の人に富が集中する現代に対して、サンバをモチーフに、伝えたい思いを曲にしました」(フレッヂ)     
⑦Mar Azul 青い海
(作詞・作曲:Francisco Xavier da Cruz)
カーボ・ヴェルデで歌われて来たスタンダード曲で、ナンシーがアルバムに是非とも収録したかった曲です。この曲でも、フレッヂがボサノヴァを念頭にアレンジと演奏を試みています。
⑧Nem Carnaval ノー・カーニバル~カーニバルさえ消えて~
(作詞・作曲:Teófilo Chantre)
ナンシーと長く活動を共にして来た偉大なるギタリスト、ヴァイス(Vaiss)に捧げられたこの曲は、コロナ禍を想起させる歌詞です。
⑨Esperança 希望
(作詞・作曲:Bilan)
この曲についてナンシーは、「この歌の歌詞には、今回、私たちのアルバムのテーマとして伝えたかった沢山の事が内包されています。他人への寛容さ、世界中の人々が共存し合う事などです」カーボ・ヴェルデのサン・ヴィセント島出身のビラン作の作品です。
⑩Tú Me Acostumbraste あなたの世界に染められて
(作詞・作曲:Frank Dominguez)
美しいキューバのボレロ。「この曲では、カーボ・ヴェルデ音楽とキューバ音楽の親和性を伝えると共に、ブラジル音楽とキューバ音楽の親和性も伝えています。」(フレッヂ)
⑪Trago Risos 微笑みを
(作詞・作曲:Fred Martins)
「私の孫についての歌です。孫は心から笑い、喜びに満ちていました。そんな孫と接して、この曲の歌詞が生まれました。曲から聴こえてくる笑い声も、孫のカレブのものです」(フレッヂ)


■アーティスト・プロフィール

ナンシー・ヴィエイラ
1975年に生まれ。14歳の時、父親がカーボ・ヴェルデ大使としてポルトガルに赴任、それに伴いリスボンに移る。ソング・コンテストでの優勝を機会に、1996年にファースト・アルバムをリリース。2004年にセカンド・アルバム、2007年リリースのサード・アルバムが大ヒット。2013年には4枚目のアルバム「そよ風のリズム、愛の歌」を日本でリリース。2024年リリースのアルバムは、ミュージック・マガジンの「2024年度ワールド・ミュージックのベスト・アルバム部門」で2位となる。
同じカーボ・ヴェルデ出身の“裸足のディーヴァ”こと故セザリア・エヴォラと並ぶ、同国を代表するシンガーとして、高い評価を得ている。
フレッヂ・マルチンス
リオ・デ・ジャネイロ生まれ。同世代のブラジル人アーティストの中でも傑出したシンガー、ギタリスト、ソングライターであり、ボサノバ、サンバ、ブラジルのポピュラー音楽(MPB)に影響されてキャリアを積んできた。2019年、2021年には、チェロ奏者のジャキス・モレレンバウムとのデュオ・コンサートを開催し、大きな話題となる。
また、マリア・ヒタやゼリア・ドゥンカンといった多くのアーティストに作品を提供している。さらに、自身のオリジナルアルバムでも高い評価を受けている。
2017年からリスボン在住。

■レコーディングデータ

録音:Jorge Cervantes(リスボン)2025年1月
マスタリング:田中三一(東京)2025年1月