タジ・マハール
「ザンジバル」
TAJ MAHAL "ZANZIBAR"
ハワイのカウアイ島でレコーディングされた、2001年リリース「ハナペペ・ドリーム~忘れられた夢~」以来の4年振りの新作が発表されました。前作はタジ・マハール&ザ・フラ・ブルーズ・バンド名義でのリリースで、ハワイミュージックの巨人、ギャビー・パヒヌィが好んで取り上げたナンバーを収録するなど、ハワイアン・フレーバーを随時に盛り込んだ作品でした。
しかし本作は打って変わり、ハワイからアフリカはザンジバルに飛んでレコーディングされました。ザンジバルは東アフリカ、タンザニアの沖に浮かぶ小島で、過去1000年以上に渡り、インドなどの極東地域とアフリカを結ぶ、文化の交流地帯でもありました。
タジ・マハールは多くの文化が入り交じった“文化のるつぼ”と呼ばれる土地にいつも興味を持っており、その対象が今回はザンジバルになった訳です。
西インド諸島出身の元ジャズ・ミュージシャンの父親と、アメリカ南部のサウス・キャロライナ生まれの教師で、ゴスペル好きの母親との間に生まれたタジは、幼い頃から家庭の中でも、異なる文化の交流をかいま見て来た事でしょう。そんな生い立ちがミュージシャン人生に少なからずの影響を与え、今回の選択に繋がったと思います。
さて、今作のレコーディング・メンバーは、タジ・マハール(ヴォーカル、ギター、バンジョー)に古くからの仲間であるビル・リッチ(エレクトリックベース)、ケスター・スミス(ドラム)の3人(3人共アフリカ系アメリカ人)に加えて、ザンジバルのカルチャー・ミュージカル・クラブと呼ばれるグループが参加しています。ターラブ(Taarab)音楽と呼ばれる、回教国の君主の前でかつて演奏されていた音楽を今も奏でるのが、このカルチャー・ミュージカル・クラブで、その存在感は「国立オーケストラ」と呼ばれる程だそうです。
カルチャー・ミュージカル・クラブは複数のバイオリン、アコーディオンにナーイ(フルート)、ウード(アラブのリュート)で構成されています。1曲目の「ダウ・カントリー」はオーソドックスなブルースですが、そこにバイオリンのアンサンブルが加わると、とても不思議な雰囲気になります。
2曲目はカルチャー・ミュージカル・クラブの魅力があますところなく発揮されたナンバーで。アラブ、アフリカ、そしてアジアの音楽の伝統を融合させた、独特のアンサンブルで構成されています。このナンバーと7曲目でボーカルを披露している女性は、90才をゆうに超えたザンジバルの大物アーチストだそうです。
タジ・マハールは1999年に西アフリカ・マリのコラ奏者、トゥマニ・ジャバティと共演したアルバムをリリースしていますが、本作は同じアフリカと言ってもそれとは違った魅力を持った作品に仕上がっています。1964年ロス・アンジェルズでライ・クーダーと結成した「ライジング・サンズ」からスタートしたタジ・マハールの今に至るキャリアを十分に伝えながら、ザンジバルでの新たな音楽的出会いが、とてもフレッシュでユニークなアルバムに結実しました。
音楽の吟遊詩人(トラベラー)の旅はまだまだ続きます。
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