琉球交響楽団
「琉球交響楽団」
オーケストラによる沖縄音楽のアルバムをつくりたい。三線や島太鼓の音を入れない沖縄音楽をつくりたい。ボーカルを入れない、オーケストラの演奏だけで伝えられる沖縄音楽をつくりたい。その様な考えからこの作品が生まれました。
演奏を担うのは『沖縄の地に本格的なプロのオーケストラを作り育てたい』という熱い思いから始まった琉球交響楽団。
沖縄で育った奏者で構成されるこの「沖縄初のプロ・オーケストラ」は本作品のコンセプトを最も理解することのできるオーケストラでした。沖縄音楽のアイデンティティを伝える絶大な力を見せつけます。そこには、沖縄在住者と沖縄出身者で構成された楽団ならではの、楽曲に対する深い理解があります。
そして、この作品が、琉球交響楽団にとって記念すべき初の録音となりました。録音セッションは初めての経験となる奏者も数多く、意欲的に取り組む姿が新鮮でした。
過去、普久原恒勇氏が弦楽アンサンブルでの沖縄音楽作品を発表しましたが、フルオーケストラによる沖縄音楽作品は今回が初めての試みです。
沖縄音楽のメロディーと、西洋音楽の様々なスタイルが表現を共にしたことにより、世界観の大きな広がりを感じさせる音楽が生まれたのです。
ボレロ風にアレンジされたカチャーシー(沖縄でお祝いの際の踊りをいいます。M4豊年音頭)、ワルツ風にアレンジされた沖縄新民謡の名曲(M6 芭蕉布)など、新たな音楽イメージを構築したと言って良いでしょう。
又、全曲その土地の音楽をモチーフにしたアルバムをリリースした日本のオーケストラは、琉響が初めてだと思います。
琉球交響楽団のミュージックアドバイザーをつとめる大友直人氏の推薦「私が信頼できる若手ナンバーワンのアレンジャー」により、長山善洋氏に全編曲を依頼。数百ページにも及ぶ、フルスコア(総譜)が書き下ろされました。
アレンジを進める際にもっとも重視した点は、それぞれの楽曲の本質的意図を十分にくみとった上で、様々な手法を用いて表現するということでした。
そのためには、メロディー、歌詞、文化的背景、歴史的意味など、楽曲をさまざまな角度からみつめることが必要でした。
そして、この課程こそが、アルバムのコンセプトをより具体的なものにしたのです。
録音は、8月24日の音あわせにはじまり、8月25日と26日の2日間に渡って行われました。沖縄県島尻郡佐敷町の音楽専用ホール「シュガーホールは」その名の通りさとうきび畑の広がる一帯に作られています。豊かな響きと密度の高い空気感で、オーケストラの放つ音を余すことなく届けました。
バランスエンジニアをつとめたのは、名手・伊豫部富治氏。
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「才能豊かな若者の働き口がなく、沖縄県外に出て行く状況を変え、沖縄の演奏家が安心して活動できる土壌を整えたい」──
熱き思いを胸に、25年間在籍したNHK交響楽団を退団し沖縄に戻り、2001年、沖縄県立芸術大学の卒業生を中心に沖縄初のプロフェッショナル・オーケストラ、琉球交響楽団を発足させたのが、故(2013年没)祖堅方正氏。長年の交流があった指揮者の大友直人氏にも自身の思いを伝え、琉球交響楽団の音楽監督(最初はミュージック・アドヴァイザー)としての就任を依頼しました。
「祖堅さんとは二人三脚でやってきました」と大友氏が語るように、祖堅氏の思いはいつも琉球交響楽団の活動の源泉にあり、それは祖堅氏亡きあとも変わらず、以来18年間プロのオーケストラとして活躍してきました。
琉球交響楽団には自治体からの公的支援がないことから、団員たちは手弁当でやりくりしてしてきました。その姿を見て「これほど純粋に情熱を傾け、苦悩する楽団はどこにもない」と、大友氏がその様子を語っています。
現在は、年2回の定期演奏会、小・中・高等学校での音楽鑑賞会の他、第三回、第四回世界のウチナーンチュ大会、沖縄本土復帰30周年、40周年における式典演奏など、政府や沖縄県からの依頼演奏も多数行っています。また、より身近に音楽を楽しんでもらうため、「0歳児からのコンサート」、「オーケストラで紡ぐ沖縄民話絵本の読み聞かせ」を2015年より開催しています。2017年には平成29年度全国共同制作プロジェクトプッチーニ歌劇「トスカ」沖縄公演において、管弦楽演奏を務め好評を博しました。
ホームページ http://www.ryukyo.org/
1958年東京生まれ。桐朋学園大学を卒業。指揮を小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、岡部守弘各氏に師事した。タングルウッド音楽祭において、A.プレヴィン、L.バーンスタイン、I.マルケヴィッチからも指導を受ける。
桐朋学園大学在学中からNHK交響楽団の指揮研究員となり、22歳で楽団推薦により同団を指揮してデビュー。以来、国内の主要オーケストラに定期的に客演するほか、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、大阪フィルハーモニー交響楽団指揮者、東京交響楽団常任指揮者、京都市交響楽団常任指揮者兼アーティスティック・アドバイザー、群馬交響楽団音楽監督を経て、現在、東京交響楽団名誉客演指揮者、京都市交響楽団桂冠指揮者、琉球交響楽団音楽監督。また、2004年から8年間にわたり、東京文化会館の初代音楽監督を務めた。
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、フランス国立ロレーヌ管弦楽団、カンヌ管弦楽団、トスカーナ管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ルーマニア放送管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団、インディアナポリス交響楽団、コロラド交響楽団、ハワイ交響楽団等と共演。東京交響楽団とは20年にわたり大友直人プロデュース東京芸術劇場シリーズを展開した。