上原潤之助、米谷和修、梅屋喜三郎
「初春~和楽器が奏でる、おめでたい調べ決定盤~」
Best Celebration Melodies Performed by Japanese Musical Instruments
そもそもの始まり:
過去に琴をメインに据えた「おめでたいアルバム」を2枚リリースし、個人的にも愛聴して来ましたが、素朴な疑問として、琴の入らない「おめでたいアルバム」は成立するのだろうか? また世にある、お正月用のCDを含めて「おめでたいアルバム」は、ほぼ琴の演奏で、「春の海」など、定型的な選曲をしたアルバムが多いと思います。琴と定型的な選曲を外した、「おめでたいアルバム」が成立する可能性はあるのか?との思いから、2022年1月に、三味線プレーヤーの上原潤之助さんと会いました。上原さんからは、「成立する」と、その場で解答があり、それなら形にしてみようと、考えたのが本作です。
後日、上原さんから届いた選曲案は「端唄」をメインに据えたもので、しかも唄が入らないという事でした。唄が入らない、器楽演奏だけの「端唄」は成立するのか?唄を入れずに、それぞれの楽曲の風景は伝えられるのか?
7月からのリハーサルを経て、8月23日からレコーディングに臨みました。
制作に際して、ポップスのみならず、純邦楽のレコーディングにも深い見識を持つ田中三一さんに、レコーディングのサポート、及び、ミックス、マスタリングを、是非お願いしたいと思いました。結果、4人目のレコーディングメンバーとして、大いにその手腕を振るって頂きました。
自然で豊かな楽器の響き、アンサンブルの美しさ、そして何よりも、音の佇まいが現代的であること。さまざまな未踏の試みが、見事に花を咲かせたのがこの作品です。 リスペクトレコード 高橋研一
選曲:
慶事の際、おめでたい席で歌われる江戸、明治時代の端唄を中心に選曲しました。さらに、お正月の獅子舞的な楽曲も選びました。また、世界の平安と平和を祈願して、アルバムラストには、オリジナル曲を収録しました。
レコーディングメンバー:
純邦楽のみならず、洋楽のエッセンスも持ち合わせている事。それが今回、演奏する上で考慮すべき事でした。「今回の演奏は、ある程度、ジャズ的なアプローチがあっても良いと思いました。唄がない分、いかに譜面以上の、豊かなニュアンスを付け加えてくれるか?そこが大切だと思いました」また「唄がある場合、伴奏楽器は唄を邪魔しないことが前提ですが、今回は唄がない分、楽器自体が歌わないとなりません。その意味で、ある程度、洋楽的な素養があった方が良いのです」(上原潤之助)
そのような観点から、今回、上原が声を掛けたのが、米谷和修、梅屋喜三郎の二人です。
アレンジとリハーサル:
「アレンジに関して、今回は唄がない為に、それぞれの楽曲に於ける世界観をまず作ってから、アレンジに入りました。笛と鳴物の呼吸、音の強弱に気を付け、また、1コーラス目、2コーラス目と、それぞれのパートで、音を抜いたり、増やしたりとアンサンブルに変化を付け、描き出される絵が豊かになるように心掛けました」(上原)
リハーサルでは、「基本的には笛がメロディーを取り、そこをベースに構築して行きました。3人がいかに気持ちよく歌えるか、という事が大切でした。今回は、一般的な純邦楽のアプローチとは違う方法論で、音楽を構築して行きますから、メンバーに戸惑いや、試行錯誤もありましたが、まずはメンバーが演奏する上で、気持ち良さを見出せるように心掛け、リハーサルに臨みました」(上原)
アルバムに込めた思い:
「収録曲それぞれ、鳴っている音をじっくりと聴いて欲しいと思います。唄が無くても、そこから豊かな風景が見えて来ます。そしてお正月を始め、おめでたい時の気分を、このアルバムから味わって欲しいと思います」(上原)
レコーディングデータ:
録音:サウンドアーツ自由が丘 2022年8月23日~26日
エンジニア:川嶋信博
録音アドバイザー:田中三一
ミックス、マスタリング:studio Chatri 飯塚晃弘、田中三一
ジャケット:
小池真理子氏のエッセイ「月夜の森の梟」の挿絵でも注目された、横山智子氏による、今作のための、書き下ろしオリジナル絵画です。モデルは“祇園小扇(ぎおんこせん)”さんです。
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ボーナストラック
上原 潤之助(うえはら じゅんのすけ)三味線
民謡・端唄・長唄・津軽・義太夫・沖縄・現代曲など、細分化された三味線界において、あらゆる三味線を自在に操るマルチ三味線プレーヤー。
現在は、ライフワークとする「子どものための和楽器コンサート」ほか、石川さゆり・氷川きよし・市川由紀乃・EXILE・AKB48・劇団四季・クルーズ客船「飛鳥II」・オンラインゲーム「原神」の公演出演・音楽制作・指導など、幅広い分野で演奏活動を展開。
書籍(全て共著)『沖縄三線で弾く 島唄 弾き語りベスト20 vol.3』『三線で聴きたい弾きたい J-POP BEST15』『CDで覚える 沖縄三線ソロ曲集』『沖縄三線で奏でる スタジオジブリ作品集』『上妻宏光 津軽三味線 永遠の詩』(すべてドレミ楽譜出版社)、『和楽器にチャレンジ』『やさしく学べる三味線教本』(ともに汐文社)。
音楽企画・制作 Studio J's Sounds 代表。街の三味線教室「福之会」主催。洗足学園音楽大学講師。
ホームページ http://jssounds.jimdo.com
米谷 和修(よねや わしゅう)篠笛・能管
福岡県八女市出身(本名/中村和義)。
第37期NHK邦楽技能者育成会に入会(1991年)と同時に上京し、民謡界の重鎮、故 米谷威和男氏の内弟子として修行し、全国の民謡の習得に励む。
以来、常に米谷会の中心に居て活動し、幾多のテレビ・ラジオ番組に尺八・笛奏者として出演し活躍している。
師匠譲りの美しい音色と歌心ある竹の響きは、唄の魅力を最大限に引き立て、共演者からの信頼も厚い。
米谷威和男氏他界後は、2001年より尺八奏法全般を宮田耕八朗氏に、2008年からは古典本曲(虚無僧が吹いた独奏曲)を素川欣也氏に師事し研鑽を積んでいる。
笛(篠笛・能管)の基本的奏法は竹井誠氏より、伝統的奏法は福原寛・藤舎理生氏より学ぶ。
テレビ出演の他、レコーディング・ステージ、更には海外公演も多い。
日中韓の民族楽器で構成された「オーケストラ・アジア」の団員として2009年より10年間活動。
現在は日本尺八演奏家ネットワーク(JSPN)/邦楽アンサンブル「昴」/脩一朗&大地のメンバーとして、幅広いジャンルでアカデミックなアンサンブルの演奏活動も行っている。
梅屋 喜三郎(うめや きさぶろう)鳴物
東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。
長唄囃子を故三代目梅屋福三郎、能楽・幸流小鼓を曽和正博に師事。
中村勘九郎・七之助錦秋特別公演、文化庁「本物の舞台芸術体験事業」、東京芸術劇場シアターオペラ「Iris」、NHK古典芸能鑑賞会、国立劇場主催舞踊公演などの国内公演や、アメリカやヨーロッパ(ロシア・スロバキア・スロベニア・スイス・ポーランド・ハンガリー・リトアニア)アジア公演など海外公演にも多数参加。
2018年6月日本インドネシア国交樹立60周年記念事業、バリ芸術祭(Pesta KesenianBali)に参加。同年7月カザフスタン・ジェスガスガンで行われた伝統音楽フェスティバルに「和楽器アンサンブルJapan」として参加。神奈川県・遼寧省友好提携締結35周年音楽交流団として瀋陽に同行。
NHKラジオ「邦楽のひととき」「邦楽百番」、大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」「八重の桜」「軍師官兵衛」「真田丸」「麒麟がくる」、NHK時代劇「オトコマエ!」「花の誇り」などに出演。また、「花の誇り」の囃子作曲。
現在、国内外での舞踊公演や演奏会を中心に活動中。
pf:菊池美奈子、笙:豊明日美と共に「巴ノ華∼はのか∼」を結成。