ソウル・フラワーや篠田昌己ユニット、ベツニ・ナンモ・クレズマーなど、多岐に渡る活動で注目のクラリネット奏者・大熊亘の初リーダ作。
■本作について
お囃子、ネパールやトルコのトラッド、全くユニークなオリジナル曲。多彩な音楽的背景と鬼才揃いのメンバー達による、イマジネーション溢れる音世界。
大熊亘ならではの解釈とメンバーの丁々発止のプレイにより「懐かしいのにここではないどこかの調べ」が聞こえてきます。
■収録曲
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- 1. 往復ヂンタ
- 吉祥寺ライヴ前、散歩中に作曲。
- 2. プンク・マンチャの踊り
- ネパール民謡にもとづいた名作絵本『プンク・マインチャ]、この曲はその主人公の女の子にならって名付けられた、ある猫の想い出に捧げられている。
- 3. ラジャマティ・クマティ
- CD「フローズン・ブラス」は世界中の旧植民地の至るところで現地化したブラスバンドがあることを音楽ファンに教えてくれた。とりわけインドやネパールには数多くの結婚式ブラスバンドがあり、大熊が同CDのビデオ版、「ブラス・アンバウンド」のライナーで書いているように、それはどこかチンドン屋に共通するテイストを感じさせる。この曲はそのようなネパールのブラスバンドのごきげんなトラッドナンバーのカバー。
- 4. 道草のために(武蔵野7/8)
- ある日、うどん屋で注文の品を待っている間に降って湧いた曲。その店の屋号が「武蔵野」だった、というのは大熊の勘違いであった。しかし、国木田独歩の書いた『武蔵野』とはほとんど変わり果ててしまったあの台地の風景、すなわち、基地のフェンスや製糸機の残がいと桑の木がある廃屋、味気ない郊外住宅と川や段丘、そして黒っぽい土に紫の山並み……、それらのいずれかにひそむ精霊がこっそりと大熊にインスピレーションを与えたのかもしれない。
- 5. 吾妻八景
- ちんどん屋のレパートリーに残るお囃子曲をアレンジ。原曲は江戸時代に成立した歌舞伎や寄席で聴くことのできる下座音楽。これぞ世界初のチンドン・パンク・ジャズ!?
- 6. フラタニゼーション・ソング
- ドイツの作曲家パウル・デッサウのブレヒト・ソング(ブレヒト演劇の劇中歌)。ある悲劇的な愛ないし和合(フラタニゼーション)を通じて戦争と女性を歌った曲。
- 7. 奥に通じる扉
- 大熊得意の「鼻唄変拍子」曲。異なるビートとその上に現れるテーマが織り成すリズムのモアレ効果が印象的なこの曲のタイトルは、画家パウル・クレーの作品「奥に入る門」(1936)によるもの。
- 8. ターキッシュ・ダンス
- 特異な魅力のメロディーやリズムで知られるトルコ〜バルカンの音楽は、また数多くの超絶クラリネット吹きを生んできた。アクサク・リズム(トルコ特有の変拍子)が印象的なこのトラッド曲は、ブルガリアのリード奏者ニコラのカバー作品に触発を受けている。大熊のアレンジによるアドリブ部分でのギターやテューバのソロはまさに聴きどころ。
- 9. 猫虫が入るから
- 皆さんは猫虫をご存じですか? 残念なことに僕はまだお目にかかったことがありません。ただそれがでたらめでない証拠に、あるところで次のような貼紙をみたことがあるのです。「開けたら閉めること 猫虫が入るから」(本人談)
- 10. 青髭の憂鬱
- 劇団「野戦の月」の劇中曲として作曲。関島岳郎のテューバと「野戦の月」の看板役者、桜井大造(扮する青髭の登場シーン)に捧げられた。
- 11. 四丁目
- 「吾妻八景」と同じくお囃子曲。チンドン屋では仕事終いに演奏されるスタンダード曲の一つ。原曲は屋台囃子。暴れん坊たちのハードコアな演奏はまさに圧巻!! ヘッドホンで聴くと病み付きになる恐れがあるのでご注意ください。
- 12. プンク・マンチャ リプライズ
- 空のかなたに去ったもの、記憶の中にだけとどまるものたちへ捧げるささやかな小品。